南六郷ブルース

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武神 八幡太郎義家読了。

桜田晋也著『武神 八幡太郎義家』を読了した。
以下、ネタバレを含めつつ感想みたいなものを綴りたい。


ブッコフの100円コーナーで見つけたシリーズ。奥付によれば初版は1997年。割りと昔だ。


八幡太郎義家さんのお話です。知名度は…イマイチかな?

『いい国作れず鎌倉幕府』でお馴染みの源頼朝・義経兄弟の四代くらい前のご先祖様ですね。「驍勇絶倫にして騎射神のごとし」と讃えられるほどの武勇の持ち主で、武家の間では伝説的にして神格化されているほどの人物。


誕生から前九年合戦までをえがいた前半と、父頼義の死去により家督をついでから後三年合戦をえがいた後半。陸奥話記が主なネタもとなんでしょうが、史料としては上質ではないものを鵜呑みにして書いていますが、物語としてはこれでありかと。リアリティを突き詰めていけばなんていうか、いろいろ残酷なものになっちゃいますし……。


作者は八幡太郎義家のことを書きたかったのはもちろん、摂関家と武家棟梁である河内源氏の溝をえがきつつも、それを現代にも通じる政治と軍事力の関係、ひいては浮薄な世論を問題として提起したかったのではと思われる。しっかしそれがどうにも説教くさくて鼻につく。純粋に物語を楽しみたい人には邪魔くさいかもしれない。


余談だが中公新書から出ている元木泰雄著『河内源氏』をこれのあとにでも読めば目からうろことなるかもしれない。『武家棟梁論の虚構』『八幡太郎の光と影』など、現実的な目線による河内源氏論は本作で描かれている英雄的な義家とはまた違うものですから。


しかしそれでも八幡太郎義家の存在が日本史に燦然と輝くのは間違いないことで、義家のことを知らない人は本作を手にとって見るのもいいかもしれない。

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