新田義貞読了。
新田次郎著『新田義貞』を読了した。
以下、ネタバレを含めつつ感想みたいなものを綴りたい。
そういえばちょっと前に読み終わっていたんだよね、これ。 ブッコフで上下各100円で売ってたのを見て買ったというあれなんだけど、どうやらもう絶版ものらしい。
新田義貞といえば南北朝時代の南朝側の武将なんですが、現在の日本における知名度は推して知るべし程度。 大楠公と英雄視される楠木正成に及ぶはずもなく、宇都宮公綱か名和長年よりは有名なんじゃないか?くらいであろうか。
そもそも南朝にやさしい太平記においても女に溺れてみたりとあんまり良い扱いは受けていない。現代の創作物でも負けたのはおまえのせいだくらいの扱い、ともすれば弟の脇屋義助のほうが有能みたいな具合になったり。北方謙三著の楠木正成では出番が少ないのにその少ない出番でさえけちょんけちょんにされるだけに用意されているというあれ。
そんな新田義貞を創作の力を借りて救い出そうという心意気を見せたのが新田次郎だ。名字が一緒だけど別に末裔とかではない(そもそもペンネームだ)
義貞の誕生から死亡までを描いているのだが、とにかく有能。もうなんていうか、こんなスーパーマンがいたのになんで南朝は負けたんだ!っていうくらい有能に描かれている。
楠木正成と語らえば必勝の策を次々と生み出すというミラクルっぷりにはさすがの僕も脱帽だよ。それらを後醍醐天皇に侍る公卿に潰されていってどうにもならなくなっていくというよくあるやつ。いつの時代も政治将校はダメダメなのだ!
天運に見放され、上司に恵まれず滅んでいくさまは、あるいは仕事で苦労している人の共感を呼ぶやもしれない。新田義貞こそ再評価が求められているのではなかろうかという思いのもとに新田次郎氏はこれを書き上げたのだろうがちょっと持ち上げすぎちゃった感はある。
しかしだいたいの創作物でいい役回りをもらえない義貞の勇姿を見れるという点でこの作品に価値は見いだせる。どこかにいるかもしれない新田義貞ファンの方は是非手にとっていただきたい。
余談だが新田義貞についてはウィキペディアよりアンサイクロペディアのほうが確信をついている気がしてならない。