南六郷ブルース

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一刀斎夢録読了。

浅田次郎著『一刀斎夢録』を読了した。
以下、ネタバレを含めつつ感想みたいなものを綴りたい。


浅田次郎の新選組三部作の掉尾を飾るらしい本作。
壬生義士伝-輪違屋糸里-一刀斎夢録で新選組三部作だとか。そんな括りがあるなんて知らなかったもので、背表紙の宣伝文句を見てへーと思った次第。


輪違屋糸里は未読だが、壬生義士伝は読んだことがある。あるというか、とても好きな小説のひとつだ。最後の方はもう文章をおいながら目がうるうるとしてきてたまらないんだよね、あれ。そんなわけでブッコフでこれを見つけてしまった以上買わずにはいられなかったんですよ。


明治の世が終わり、大正の世があけて間もない頃、近衛師団梶原稔中尉はとある縁で一刀斎と呼ばれる人物と出会うことになる。この一刀斎こそ幕末の世に新選組副長助勤として動乱の京で剣名をはせた斎藤一その人であった。梶原を一角の剣士と見込んだ斎藤一は、彼を剣の深奥へ導くために己が見知った全てを語り聞かせる。


一人称と三人称が交互に入れ替わる構成で描かれた本作。壬生義士伝に似た構成だが、あちらは多くの語り部が出てきたのに大してこちらは『一刀斎夢録』の名に恥じぬ斎藤一のひとり語り状態です。


まー、良いんだけどね。壬生義士伝に出てきたあのキャラクターな斎藤一が語り部なんですから、面白いのに違いはない。しかし壬生義士伝では吉村貫一郎の物語という筋が本作にはないんだよねぇ。あくまで一刀斎がひたすら語るだけ。いや一応聞き手になる梶原にも背景みたいなものがあるんだけど、フレーバー程度というか、大きな物語ではないのよね。


それでも浅田次郎の幕末感を堪能できるし、壬生義士伝を好きなら買って損はないかなぁ。そのうち輪違屋糸里も読んでみよう。

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